文京区手話言語条例 手話は、手、指、体の動き及び顔の表情などにより視覚的に表現する言語であり、障害者の権利に関する条約や障害者基本法(昭和四十五年法律第八十四号)においても言語として位置付けられる、手話言語を必要とする者にとって生活する上で必要不可欠な意思疎通の手段である。 しかし、手話言語は、過去に使用が制約されてきた歴史があり、手話が言語として認められてこなかったことをはじめ、手話言語を獲得できなかったこと、手話言語により学習できなかったこと、手話言語を使用しやすい環境が整備されてこなかったこと等により、これまで手話言語を必要とする者は必要な知識や情報を得ることができず、多くの不便や不安を感じながら生活してきた。 文京区は、手話は言語であるという認識の下、手話言語に関する理解、手話言語の普及、手話言語の獲得及び習得、手話言語による学習並びに手話言語の使用を促進する環境の整備に取り組むことで、全ての人が支え合い、手話言語を必要とする者が安心して生活できる地域社会の実現を目指して、この条例を制定する。 (目的) 第一条 この条例は、手話は言語であるという認識の下、手話言語に関する基本理念を定め、区、区民及び事業者の責務を明らかにするとともに、区の施策の基本的事項を定めることにより、手話言語を必要とする者が安心して生活できる地域社会を実現することを目的とする。 (定義) 第二条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。 一 手話言語を必要とする者 ろう者、難聴者、中途失聴者、盲ろう者等をいう。 二 区民 区の区域内(以下「区内」という。)に住む人、働く人及び学ぶ人をいう。 三 事業者 区内において事業活動を行う法人その他の団体又は個人をいう。 四 障害者 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」という。)がある者であって、障害及び社会的障壁(障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。)により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。 五 当事者団体 主として障害者及び障害者と日常生活を共にする者等をもって構成される団体をいう。  (基本理念) 第三条 手話言語に関する理解、手話言語の普及、手話言語の獲得及び習得、手話言語による学習並びに手話言語の使用を促進する環境の整備は、次に掲げる事項を基本理念として行われなければならない。 一 手話言語を必要とする者は、手話言語を獲得する権利、手話言語で学ぶ権利、手話言語を学ぶ権利、手話言語を使う権利及び手話言語を守る権利を有し、これらの権利は、尊重されなければならないこと。 二 手話言語による意思疎通は、手話言語を必要とする者にとって円滑に行われなければならないこと。 三 全ての人は、障害の有無にかかわらず、相互に尊重されなければならないこと。 (区の責務) 第四条 区は、区民、事業者、国及び他の地方公共団体その他関係機関等と協力し、前条に規定する基本理念(以下「基本理念」という。)に基づき、施策を推進するものとする。 (区民の責務) 第五条 区民は、基本理念に対する理解を深め、区が推進する施策に協力するよう努めるものとする。 (事業者の責務) 第六条 事業者は、基本理念に対する理解を深め、区が推進する施策に協力するよう努めるものとする。 2 事業者は、その事業活動において、基本理念に基づき、手話言語を必要とする者が手話言語による意思疎通を円滑に行うことができるよう努めるものとする。 (施策の推進) 第七条 区は、第四条に規定する責務を果たすため、次に掲げる施策を推進するものとする。 一 手話言語に対する理解の促進及び手話言語の普及に関する施策 二 手話言語を必要とする者が、必要な場面において、手話言語による情報の取得及び利用並びに意思疎通を行うための施策 三 手話通訳者の確保、養成及び資質向上のための施策 四 前三号に掲げるもののほか、区長が必要があると認めた施策 2 区は、前項各号に掲げる施策の推進に当たり、障害者基本法第十一条第三項に規定する市町村障害者計画及び障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成十七年法律第百二十三号)第八十八条第一項に規定する市町村障害福祉計画との整合性を図るものとする。 3 区は、第一項各号に掲げる施策の推進、実施状況の点検及び見直しを行うに当たり、当事者団体の要望を踏まえ必要があると認めるときは、当該団体から意見を聴取する機会を設けるものとする。 (切れ目のない支援) 第八条 区は、出生時からの成長段階又はその必要とする段階に応じて、手話言語を必要とする者が手話言語を獲得し、及び習得し、並びに手話言語で学習する機会を確保するよう努めるものとする。 2 区は、当事者団体と連携して、手話言語を必要とする者及び当該者と日常生活を共にする者に対し、手話言語に関する情報及び学習の機会を提供するとともに、切れ目のない支援を行うための相談体制等の環境を整備するよう努めるものとする。 (福祉及び保健サービスにおける環境整備) 第九条 区は、福祉及び保健に係るサービスを提供する者が行う、手話言語を必要とする者が手話言語を利用しやすい環境を整備するための取組に対して、必要な施策を講ずるよう努めるものとする。 (災害時等における措置) 第十条 区は、災害その他の非常事態において、手話言語を必要とする者が手話言語で必要な情報を取得し、意思疎通を図ることができるよう、必要な措置を講ずるよう努めるものとする。  (委任) 第十一条 この条例の施行に関し必要な事項は、区長が定める。 付 則  この条例は、令和六年四月一日から施行する。